トロイカ――雪のロシアの旅(4)

スズダリは十二世紀半ばが最盛期かと推察される。街に数多い寺院、修道院の美事さは第一級でロシアの古都にふさわしい。ここを拓いたスーズダリ・A・P大公の勢力が偲ばれる。
街はずれの一画に古い木造建築が数戸保存されている。いずれも周辺の村から移された文化財で、古式のデザインに興味は湧くが周囲の環境にはお構いなく、ただ他所から移しただけでは価値が下がり興味も半減する。同じ例は日本にもあるが一考を要する問題であろう。ちなみに木造建築で有名な北方オネガ湖畔、キジ島の寺院が思い出される。
十八世紀のはじめから風雪に耐えて、今もそのままの姿は貴重である。しかも農民大工が釘一本も使わずに建てた苦労は、信仰の精神力によるものであろう。
「トロイカ停めてウオツカを岬り岬りパイスラキンキラキン」
大正年問、たしか十二~十三年頃に奇妙なキンキラキン節という流行歌があった。少年の頃は、訳もわからぬままにトロイカは馬車らしく、ウオツカはロシアの酒のようだと覚えた。トロイカが三頭建ての馬が曳く雪国慌とは知るよしもなかった。
絵本やクリスマス・カードの雪原を、鈴を鳴らしながら疾走する馬車にあこがれたものだ。今は観光客へのサービスで、平坦な雪原を一周するだけのショーとなった。
針葉樹の森をぬけて運動場のような雪原へ出ると、手風琴をひく青年が二人、傍にはキャンプ・ファイヤーの一大焚火が燃えていて、歓迎の挨拶だ。重装備の駅者の数人が馬の手入れや客席の準備に忙しそう。
向かい合って四人が乗れる大型の馬様ですべり心地は一良さそうだが、乗る気が進まぬのは童心を失ったせいでもあろうし、我先に良い席に急ぐのも億劫だ。
ロシアの民衆版画ルポーク(LUPOK)にトロイカの馬を狼が襲う凄い画がある。駅者が必死に鞭を振るって馬力をかけるが、一頭は森から追っかけてきた狼の1群に下腹部を噛まれて透る血潮。血の匂いに飢えた狼どもが執掛に追跡する。
幌の中の紳士は娘を抱いたままでピストルを一発。うまく当たって一匹はもんどりうって倒れる。しかし狼群は、ますますトロイカに迫って手に汗を握る恐怖のドン底。

この版画は紙芝居でも見るように、果たして結末はの質問には答えない。そこにひかれて想像の世界が童心をよび起こすので、時々見るのが私の娯しみである。狼は日本では絶滅したが、ロシアには今もシベリアを初め僻地の森林帯に棲息するようである。
たばこに「トロイカ」というのがある。が、安たばこで人気がない。またロシア人が好物のウオツカを買う時に、持ち合わせの金が足らぬ時はコ一人がワリ勘で一本買い、コップに一杯ずつ飲めるところから「トロイカ」でいこうという話を聞いた。トロイカの三頭が三人に変わったわけである。
雪が消えて棲から馬車に改装されると「トロイカ」の名も消える。

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